両色灯

今朝の新聞はイージス艦「あたご」事故関連の記事でいっぱいだった。その中で「え?」と気が付いたことがある。他のボートオーナーの方も気が付かれたと思う。そう、石破防衛相の「あたごの右方向から来る漁船の”緑の灯火”を確認した」という報告だ。

夜間航行する船舶には決められた灯火を点すことが義務付けられている。そのうち「舷灯」というのがあり、船舶の右舷(船体の右側)には緑色の灯火、左舷(船体の左側)には赤色の灯火を点す。つまり、上記の報告によれば、あたごの見張りは漁船の右舷を見たことになる。

しかし、右方向から来て左に向かう船の右舷を見ることは不可能だ。この矛盾に対し、今後納得の行く説明があるのかどうかに注目したい。

それからもっと気になることがあった。ネットを検索したら、毎日新聞の記事に以下のような記述があった。

2月20日10時7分配信 毎日新聞より抜粋>

清徳丸は捜索に当たった7隻とほぼ同時刻の19日午前1時ごろ、川津港を出港、南南西に向かった。清徳丸は出港時、赤、緑など前後に四つの明かりを点灯させていた。

金平丸は20〜30分遅れて出港し、南西から南南西に航路を取った。途中で清徳丸を追い抜いたらしく、午前4時ごろ、あたごと遭遇。金平丸のほぼ正面か ら減速せず向かってきたため、市原船長は「このままでは衝突する」と感じ、右へかじを切った。あたごとの距離は約1.5キロで、すれ違った直後にいくつか の明かりが点灯した。市原船長は「自分の船に気付いた」と感じたという。

金平丸はそのまま漁場の三宅島へ向かったが、午前6時過ぎに漁協の無線で「清徳丸が事故に遭ったようだ」と連絡を受け、現場に急行。午前7時40分ごろ、船体が二つに分断された状態で、海面に浮かぶ清徳丸を発見した。漁具や布団なども海上に散乱していた。

清徳丸の前に「あたご」に遭遇した金平丸が、衝突の危険を感じる目に遭っていたのだ。そして「すれ違った直後にいくつかの明かりが点灯した」ことで「自分の船に気付いた」と感じている。もちろん「あたご」の乗員も気付いたことだろう。

それなのに、直後の清徳丸をうっかり見落とすことなどあり得るのだろうか?もっと言えば、少なくとも衝突の1分前にはどちらも回避行動をしたにも関わらず、高々12mの漁船を舳先で真っ二つにへし折るような衝突をすることが、果たしてあり得るのだろうか?

例によって、この手の事件は詳細が第三者によって調査されることはなく、原因は人為的ミスで今後も安全に務めるというコメントで終わるだけであろう。しかし、これまでの歴史をふり返ってみても、国家の重大な問題が討議されている最中に、何故かセンセーショナルな事件が起きていることが 指摘されているのだ。

今朝の新聞も事故の記事ばかりで、今まで紙面を賑わしていた国家の重要な問題が影を潜めていた。大々的に報道される事件の裏で何が起きているかも、しっかり見ておかなければと思う。

<追記>
新しい情報が出てきた。毎日新聞 2008年2月20日 15時00分

これによれば、緑の灯火が右に見えたのは、 「あたご」の右前方にほぼ正面を向いて清徳丸がいたのではないか、とのこと。なるほど。しかしこれなら、清徳丸が右旋回を始めた時点で赤い左舷灯が見えるはずであるが、これまでに赤の灯火については言及がない。左舷灯が切れていた可能性も否定できないが、他のマスト灯などはどうだったのだろうか。

そして、

海自などの調べでは、あたご乗組員は衝突の2分前、右に清徳丸右舷の緑の灯火を視認。1分後、灯火がスピードを上げ動いたため船と確認、さらに1分後、全力の後進をかけたが衝突した。

とのことだ。ということは、

  • 衝突2分前:緑の灯火を確認
  • 衝突1分前:灯火が動き、船であることを確認
  • 衝突直前:全力後進

であり、衝突直前まで減速もせず直進していたことになる。先に遭遇した金平丸のときも減速せず直進したことから、避けるのは漁船たちであって自分たちはその必要はない、という認識なのだろうか。

いずれにしても「あたご」の見張りは、発見から衝突までの一部始終を見ているはず。曖昧な証言は許されない。

コメント (4) > “不可解な事故”

  1. 私も『緑色の灯火を見た』という報告には『え?』と思いました。
    今後の報告が気になるところです。

    2月 20th, 2008 | 17:38:58
  2. 新しい情報が出てきました。緑の灯火については有り得ることだと思います。
    しかし、それならなぜ赤の灯火が見えなかったのかが気になります。

    それはともかくとして、天下のイージス艦が自分より10分の1以下の小さな漁船を回避するなどという意識は、彼らには全くないのかもしれませんね。

    2月 20th, 2008 | 19:54:05
  3. Ran

    今回の事件は、ほんとに残念ですね。
    遺族の方々の気持ちを察します。

    問題が、ずれて「辞任」の話になってしまって、
    野党は「辞任するべき」と、さっきテレビで流れてました。

    論点が、「違うんだけどなー、」と思うと情けない限りです。

    恥ずかしいと思う気持ちは、もっと大切にしないといけないのでしょうね。

    2月 21st, 2008 | 20:13:57
  4. 民主党が政権を取れない理由はそういうところにあるって、
    いい加減気付いて欲しいですよね。
    政治家も官僚も自衛隊もあんな体たらくで、
    「愛国心」なんてちゃんちゃらおかしいですよ。

    2月 21st, 2008 | 23:35:49

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